3.著作権があれば意匠権はいらない?

例えば、「置物」としての彫刻を完成した者は、著作者であるとともに、置物をデザインしたともいえます。著作権は、面倒な出願などしなくても発生し、拒絶されることもありません。

では、著作権があれば意匠権はいらないのでしょうか?

意匠権は、工業上利用可能であることが要件となっています。したがって、一品製作的な彫刻は、そもそも意匠権の範疇ではありません。問題は、例えばあなたが自らの著作物(例えば置物)を複数複製して販売するような場合です。(なお、著作権は、大量生産品は保護対象ではありませんが、大量生産されたとしても「純粋美術と同視し得る程度に美的鑑賞の対象となる」と認められれば、例外的に保護が認められ、意匠権と著作権とで実質的に権利が重なる部分が生じます。)

例えば、あなたが置物の販売を開始した後、Aさんが同じ形状の置物を販売したとします。この場合、著作権によれば、Aさんがあなたの置物を複製したような場合に権利が及びます。要は、他人が、「あなたの置物を見て同じものを複製した」場合です。他人が、「これは私がデザインしたもので、偶然あなたの置物と似た形状になっただけです」と言われれば、権利行使が困難となります。むしろ、Aさんにも同じような著作権が発生することになります。 

意匠権を取得していれば、Aさんが何を言おうとも、原則、あなたのデザインと同じ形状のものを販売していれば、たとえ本当にAさんが独自にデザインしたとしても権利行使が可能です(但し、意匠権を取得する前にAさんがすでにデザインを完成していた場合には、権利行使ができない場合があります)。また、意匠権には「類似」という概念があります。あなたが取得した意匠権のデザイン内容と全く同一でなくても、類似したものまで権利行使が可能です。
 
このように、意匠権は強力な権利であるがゆえに、取得するために手続きを要するのです。なお、多くの企業は、「意匠権」に価値を認め、時にはその「意匠権」自体が高額で売買される場合もあります。